視察に行ってきました?日本と海外で調剤薬局比較をする奴に気を付けろ!

こんにちは、Yatzです!
「日本と海外の調剤薬局って、どっちが進んでるの?」なんて話、薬剤師界隈で一度は耳にしたことがあるかもしれません。

でも、その比較って本当に意味あるんでしょうか?

現地視察をしてきた人の話を鵜呑みにする前に、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。

この記事では、日本と海外の薬局を比べることの落とし穴、そしてその話を持ち出す人の意図や背景、日本の医療の「強み」と「弱点」にまで踏み込んでいきます!

目次

そもそも比較する必要ある?

確かに、海外の薬局事情は気になるし、刺激的な話題。でも、医療制度そのものが国ごとに全く違う中で、表面だけ見て「海外の薬局はすごい」「日本は遅れてる」と決めつけるのは危険です。たとえば、アメリカはOTC薬の活用が進んでるけど、それって医療費が高すぎて病院に行けない人が多いという裏返しでもある。比較するなら、その制度的背景を踏まえないと、単なる憧れや妄想で終わっちゃいます。

昔になりますが、薬剤師会のツアーかなんかでドイツ視察いった方がとにかくドイツは凄い!とよく分からない理屈で話していたのを覚えています。

とりあえず比較表作ってみた

項目日本ドイツアメリカイギリス
保険制度国民皆保険社会保険方式民間保険中心公的医療保険
料金全国一律
自己負担額の上限有
全国一律保険種類、プランにより負担額が大きく異なる全国一律
子どもや高齢者、慢性疾患患者は免除
開設者要件誰でも可薬剤師のみ
1人1薬局原則
誰でも可
※一部州除く
誰でも可
運営者要件管理薬剤師必須管理薬剤師必須管理薬剤師必須管理薬剤師必須
OTC販売の比重比重低
医療保険の市場規模はOTCの10倍
比重中
OTC管理厳格で薬局のみ
比重大
OTC、ヘルスケア商材の比重大
比重中
OTCの積極活用あり
ワクチン接種不可不可
(インフルエンザ、肺炎球菌他)

(インフルエンザ)
健康相談・支援機関低い
処方せんに依存
健康相談機能高い
(国民信頼大)
健康相談機能高い
(ワクチンや簡易検査)
健康相談機能高い
(ワクチンや簡易検査)
薬局のチェーン化×
寡占化の状況寡占化進行中(低)
上位10社で約20%程度
寡占化無し

寡占化進行中(中)
上位3社で約25%
寡占化進行中(中)

薬剤師数約31万人約6万人約31万人約6万人

作ってみたものの、結論としては「そうなんだ。へぇー。」といったものかと思います。しかも、制度背景はそんな簡単でなく細かいところを拾ったらそれぞれが非常に合理的に出来ています。

厚労省なら視察をして制度改革にというのもまだ分からないでもないですが、我々がこのような情報を得てもそうなんだで終わってしまうのが現実だと思います。

個の企業の戦略的なものを参考にするのはありだとは思います。ウォルマートを意識している企業は世界中にあると思ってますし、コスモス薬品はその典型で、ここを参考に増収増益を実現している気がします。

それを持ち出す方の心理を考える

「海外ではこうやってる」「日本は遅れてる」と言い出す人、たまにいますよね。

簡単に言うと、自己ブランディングや優位性をアピールしたい欲求の表れですね。
そんなのSNSで勝手に「視察行ってきました!」って発信してくれればいいやと思いますが、視察にも行ったから自慢したいのはしょうがないですかね。

日本は日本で風土や文化に根差した医療の形を実現しており、なかなか真似できない完成度の高い医療システムを実現しています。

ので、安易に比較は出来ないです。そりゃいいとこどりが出来ればいいですが、例えばアメリカみたいに手術一つでうん百万円のリスクを背負うなんてとてもじゃないですが日本では怖くて出来ないですよね。でもアメリカでは普通に受け入れられています。積上げた文化が違うからそんな簡単には比較できないのが本当だと思います。

日本の医療の良さと弊害を考える

「日本の医療って、完成度めちゃくちゃ高くない?」

正直、これが本音です。世界的に見ても、日本の医療制度は相当なレベルにあると思います。だからこそ、「海外が日本を見習うべき」と感じることさえあります。

ただ一方で——。

「手厚すぎるんじゃ…?」

そんなモヤっとした声があるのも事実です。

そこで今回は、「日本の医療のすごいところ」と「ちょっと気になる点」を一緒に整理してみたいと思います!

日本の医療の良さ

日本の医療って、実はとんでもなく恵まれてると思いませんか?

保険制度がしっかりしていて、誰でも平等に医療を受けられる。調剤薬局のカバー率も高くて、生活のどこかに“医療”が常にある安心感。この「いつでも、どこでも、誰でも」受診できる体制って、世界的に見てもかなりすごいんです。

どこでも・誰でも・すぐに診てもらえる安心感

保険証1枚あれば、全国どこでも診察が受けられて、お薬も処方してもらえる。しかも紹介状なしで大病院にも行ける(追加料金はかかるけど)。

過疎地でも診療所があるのって、当たり前じゃないんですよね。都市部に集中しがちな国も多い中で、日本は“アクセスの良さ”が群を抜いています。

調剤薬局だって、コンビニ並みにあちこちにある。処方箋があれば、基本どこでもOK。こういう“医療インフラの安心感”って、意外と気づかないけどすごい価値。

医療費が「ほとんどかからない」という奇跡

自己負担3割(子どもや高齢者はもっと少ない)って、世界的に見るとほんと異次元。たとえばアメリカだと、風邪で受診して数万円なんてことも全然あり得るし、東南アジアでも自費のところは普通に高い。

そんな中で「ちょっと風邪っぽいから病院行こ」が言える日本。これ、実は奇跡的な環境なんです。ありがたみ、ついつい忘れがちですけど。

日本の医療の問題点(弊害)

病院やクリニックの数が桁違い

日本では、全国に病院は8,130施設(2023年7月末)、病床数は 1,467,613床(2023年7月末)、一般診療所(クリニックや診療所)は 105,331施設(2023年7月末)あります。

これは、全世界を踏まえて見てみると

国民100万人当たりの病院数は全世界でコロンビアや韓国に次ぐ3位となっています。

† 出典元:www.statista.com

続いて、国民1,000人当たりの病床数は、韓国に次ぐ2位となっています。

† 出典元:Global Economy.com

さいごに、国民100万人当たりの一般診療所数はというと、

国/地域病院+診療所等(推計)人口(百万人)施設/100万人(概算)
台湾23,89623.61,012
日本105,331125.5839
タイ36,67368.0540

…と、いずれも日本は高水準です。

これって、裏を返せば「アクセスが良すぎる=供給過剰気味」ってことでもあるんですよね。医療機関があちこちに分散してしまって、非効率な現象が起きているのも事実。

しかも、医療従事者の地域偏在。簡単に言うと「人材の奪い合い」が起きています。薬剤師もその例外ではなく、年々人材確保は難しくなっている。

なぜか?
まだ薬局が増えてるんです。正直、もう飽和してるはずなのに…。

企業側も新しい業態に舵を切らないとキツい。とはいえ、「じゃあ何やるの?」って言われると、こちらも悩ましい。ので、この話はこのへんで(笑)。

医師会の存在が

日本の医療がここまで安定しているのは、日本医師会の存在が大きいのも確か。でも一方で、「医療改革が進まない要因の一つ」とも言われています。

薬剤師の年収を考える。高い?いや、低すぎ?リアルなところを知りたい!でも記載しましたが社会保障費は限界まで来ています。にもかかわらず、医療の効率化は依然として進みません。

医療機関の数が多すぎて、一つひとつの運営母体が小規模。そうすると、IT投資や効率化のためのシステム導入に数千万円なんてかけられない。

誰かが飛び抜けた効率化をしようとしても、全体のバランスを見て“にらみ”をきかせてくる存在——それが医師会でもあるんです。

という感じで、もちろん日本の医療を支えてきたことに日本医師会は大きな役割を果たすわけですが、同時に大きな改革の妨げにもなり得るのが日本医師会という存在なわけです。

さいごに

海外の制度や成功事例に目を向けることは大切です。でも、それをそのまま「日本もこうあるべきだ」と語る前に——
その背景や意図を、もう少し丁寧に考えてみる必要があるのではないでしょうか。

日本の医療制度、薬局の在り方、薬剤師の役割。

批判の材料として海外の例を引っ張ってくるのではなく、
今ある“強み”と“課題”を、正しく見つめること。

手厚くて、アクセスが良くて、誰もが平等に医療を受けられる。
そんな日本の医療は、間違いなく世界に誇れる仕組みです。

でも同時に、制度疲労・供給過多・人材不足・非効率という「副作用」も静かに進行しています。

これから先、
誰がどんな視点でバランスをとるのか。そして私たちは、どう関わるのか。

その答えを探していく議論は——
いつでも、WELCOMEです。

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この記事を書いた人

大学卒業後、外資系製薬企業のMRとして社会人スタート。その後、大手調剤薬局で薬剤師として投薬と在宅業務また本部人員としてプチ管理職を経験しております。
その後は投資系金融企業に転職したのち、今はITスタートアップにてCMOとして従事しています。

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