「数字に強くなりたい」──
そう思ったこと、ありませんか?
一度はあるはず。でも、忙しい業務に追われて、「どうやったら強くなれる?」「そもそも強くなるって何?」と考える間もなく、そのまま時間が過ぎていく……。そんな薬剤師の方、多いのではないでしょうか?
この記事の結論を先にお伝えします。
数字に強くなりたいなら、まず簿記を取ってください。
特に、薬局業界にいる薬剤師には「簿記」というスキルが抜群に効きます。
なぜ簿記なのか? その前に
昇進・昇格・ポジションアップに“数字力”が効いてくる
「数字に強い人」は、実際にキャリアでも得をしています。これは感覚論ではなく、データで示されている事実です。
- ハーバード・ビジネス・レビュー
“The Best-Performing CEOs in the World”でも明確に示唆されています。
世界のトップ経営者に共通するスキルの一つが「ファイナンスの理解」。経営判断には数字が欠かせません。 - OECD/PIAAC調査
分析結果として、「数的リテラシーの高い労働者ほど、賃金水準・管理職比率ともに高い」ことが示されています。
実データをもとに数的リテラシーの高い人ほど、年収も管理職登用率も高い傾向にあります。 - Stanford Rock Center
調査レポート“Survey on the Board of Directors”で財務スキルと役員登用の関係は明確として、「財務スキル」は取締役に求められるスキルの中で最重視されています。 - World Economic Forum 2023年レポート
今後10年で昇進候補に最も求められるスキルの一つが「財務リテラシー」。特に「非財務職の人」が財務リテラシーを身につけた時、横断的な昇進のチャンスが増えるとされています。
昔から「数字に強い=ビジネスリーダーの素養」と見なされており、その傾向は今も変わっていないということです。
でも薬剤師って、数字に触れる機会がないんです
実際の薬剤師業務では「数字」と言っても処方箋の受付回数や在宅件数などカウントできる数字ばかり。
経営に関わるような「利益・損益・資産・投資」といった数字には触れません。
BS(貸借対照表)やPL(損益計算書)なんて言われても「???」となる方も多いはず。
上場企業の役員クラス(それでも分からない人もいます)か、強いて言うなら「財務」的な部署を持つ企業で、かつその部署に配属されたら少し可能性があるかもしれないという程度です。
ちなみに、薬局のオーナーもほぼ理解していない人がほとんどです。

当時で、売上4,000億規模のドラッグチェーンに勤めていましたが、管理職はもとより、役員にもPL,BS理解している人はほとんどいなかった記憶があります。
※役員や管理職に証券や銀行出身者も多く、その方たちは除きます。
なんでかというと、調剤やドラッグ市場特に、調剤においては、法規制等枠組みの中であらゆる企業がほぼ均一のオペレーションをするという珍しい業界のため、基本的には立地など利益ベースが推測し易く、また運営している上でキャッシュの流れなど感覚の理解が、現実と相違が少ないことが挙げられます。
簡単に言うと、数字の理解が弱くても何とかなってしまう業界である。ということです。なので、
数字に強くなりたいけど、残念ながら薬局業界において数字力を高める機会はほぼありません。
薬局業界においては業務を通じて見につくもの可能性は少なく別の方法を模索することになるのですが、その一つの取っ掛かりとして簿記がおすすめということになります。
「いつかマネジメント側に回りたい」「転職や独立を見据えてる」なら、数字への理解は避けて通れない!だけど、でも現場では「数字に触れる機会がほぼない」のが現実。
だからこそ、意図的に学ぶ必要があり、その一つに簿記がおすすめということです。
ではなぜ簿記なのかに触れたいと思います。
「数字力」 その第一歩が「簿記」です
簿記は、お金の流れを読むための“共通言語”。
「利益って何?」「売上とキャッシュフローの違いは?」
といった基礎を理解できるようになる、数字に強くなるための最短ルートの一つなんです。
しかも、今の簿記試験はネット試験(CBT方式)でほぼ通年受験可能。
自分のタイミングで受けられるので、忙しい社会人でも挑戦しやすいのが特徴です。
簿記で数字に強くなるのは本当か?
本当です。
細かいことより社会での支持を考える方が分かり易いかと思います。
簿記は“数字の言語”を学ぶ体系的な方法として支持されている


業種問わず簿記保有者が存在しております。
これは、簿記が実ビジネスにとってプラスの効果を示すことを示唆している点でもあります。
実際に多くの方が受験しています。
参考までに、2022年4月~2025年3月までの受験者数と合格率を載せておきます。
2級、3級の試験で実に延べ年間35万人が受験する資格の中でも非常にメジャーなものとなっております。
日商簿記検定 各級の過去3年間の受験者数・資格取得人数
- 1級
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年11月(第168回) | 10,420名 | 1,572名 | 15.1% |
2023年11月(第165回) | 10,251名 | 1,722名 | 16.8% |
2022年11月(第162回) | 9,828名 | 1,027名 | 10.4% |
- 2級
ネット試験(CBT方式)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年4月~2025年3月 | 124,429名 | 44,359名 | 35.7% |
2023年4月~2024年3月 | 119,036名 | 41,912名 | 35.2% |
2022年4月~2023年3月 | 105,289名 | 39,076名 | 37.1% |
統一試験(ペーパー試験)
年度・回次 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2025年2月(第169回) | 7,118名 | 1,486名 | 20.9% |
2024年11月(第168回) | 7,589名 | 2,187名 | 28.8% |
- 3級
ネット試験(CBT方式)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年4月~2025年3月 | 254,433名 | 98,235名 | 38.6% |
2023年4月~2024年3月 | 238,155名 | 88,264名 | 37.1% |
2022年4月~2023年3月 | 207,423名 | 85,378名 | 41.2% |
統一試験(ペーパー試験)
年度・回次 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2025年2月(第169回) | 21,026名 | 6,041名 | 28.7% |
2024年11月(第168回) | 19,588名 | 5,785名 | 29.5% |
補足
– 2級・3級は「ネット試験(CBT方式)」と「統一試験(ペーパー試験)」が並行して実施
– 1級は年2回実施の全国統一試験のみ



当時、仕訳に関しては手書きで回答していた気がしますが、ネット試験だと勘定科目選択と金額入力になるんですね。便利な時代になりました。
数字の”読める人”になる
ここまでは中身というより信頼性について記載しましたが、
実際に、簿記を通じて身につくのは以下のような感覚となります。
- 売上・費用・利益の構造がわかる
- キャッシュと損益の違いが見える
- 資産・負債の関係を理解できる
- 「利益が出てるのに現金がない」の理由がわかる
これらはすべて、ビジネスの基本であり、経営視点に直結します。
薬剤師としてこの視点を持てると、組織内での評価は一段上がります。
さらに、転職や独立を考える場合にも大きな武器になります。
どの簿記を取ればいいの? → まずは「日商簿記3級」でOK!
簿記検定はいくつか種類がありますが、迷ったらこれ。
✅ 日商簿記(日本商工会議所)
知名度・信頼度ともに抜群。就職・転職でも評価されやすい。まぁ、王道です。
他にも、全経簿記(全国経理教育協会)のものや、全商簿記(全国商業高等学校協会)といったものもありますが、一般的には簿記というと日商簿記を示します。
難易度別にまとめると
級 | 難易度 | 学習時間 | 対象 | コメント |
---|---|---|---|---|
3級 | ★★☆☆☆ | 40〜50時間 | 初心者 | まずはここから!数字に慣れるには十分 |
2級 | ★★★★☆ | 100〜150時間 | 社会人・転職者 | 実務的な力が身につく。履歴書でも評価される |
1級 | ★★★★★ | 300時間〜 | 会計士・税理士志望 | 薬剤師には不要。時間がもったいない |
3級を受ける場合は、1日1時間をしっかりやれば2ヶ月程度で十分受かります。
もちろん時間が取れるなら1ヶ月以内での合格も十分可能です。
で、肝心のどの級を目指すのかですが、ごちゃごちゃ考える前にまず3級取りましょう!
その上で、「勉強っていいな。」「数字っていいな。」と感じられたら2級まで一気に到達を目指すのが良いと思います。



一般的には、簿記2級からが評価されると言われておりますが、個人的には3級でも十分アピールが出来ると思っています。
特に薬剤師が簿記持っていたら「おっ!」て、くいつきます(笑
受験もハードルが低くなってます
日商簿記の3級・2級は、CBT方式によりほぼ毎日受験可能。
昔と違い、「年に数回しかチャンスがない」なんてことはありません。
商工会議所の専用サイトから受験予約が簡単に行うことができます。
受験料は3級で3,300円(税込・事務手数料別)、2級で5,500円(税込・事務手数料別)と非常にリーズナブルです。飲み会を一回スキップするだけの話です。
受験会場もたくさんあるので、平日仕事終わりでもOK。
これはもう受けない理由がありません。



わたしが受けた時は統一形式のみでしたから、この試験を外すとまた数カ月待つ羽目になるわけです。しかも貴重な休日が試験で潰れますから。
それに比べて平日も含めて自分の都合に合わせて受験できる今の状況は正直羨ましいです
勉強方法は?書籍+アプリで独学OK
独学でも十分合格可能です。おすすめはこの2つ:
📘 書籍:
正直、きちんとやれば何でも良いとは思いますが、多くの方に指示されている書籍は以下になります。
- スッキリわかる日商簿記3級(TAC出版)
- パブロフ流でみんな合格 日商簿記3級
📱 アプリ:
- スタディング(studying.jp)
スマホでサクッと学べて人気。簿記以外の資格にも対応しています。
値段は、簿記3級だと4,000円程度、2級が20,000円程度でセット割引もあります。



スタディングは優秀ですが、まずは書籍からきっちりやり込むので良いとは思います。
資格は“目的”ではなく“武器”
さて、簿記を取る理由を再度確認しましょう。
簿記を活用した経理のような仕事をするためではなく、
- キャリアを拡げるため
- ビジネス視点を持つため
- 昇格・評価を得やすくするため
であるわけです。それを踏まえて自分なりに簿記を取るストーリーを意識しましょう。
例えば、面接で「なぜ簿記を取ったの?」と聞かれても、すらすら回答できるわけです。
例として、
「経営感覚を持った薬剤師を目指したかったからです」
「数字に苦手意識があったので、まずは基本を固めました」
「将来、マネジメントや運営に携わるために必要だと思いました」
こんな言葉がとっさにでれば、簿記も選ばれたことに喜んでいます。
最後に:薬剤師こそ、“数字で語れる人”になろう
簿記を取っただけでいきなり「数字を読む力」「お金の流れを可視化する力」が身につくわけでありません。
でも、そこに踏み出した薬剤師と、そうでない薬剤師とでは
5年後のキャリアに明確な差が出てきます。
「薬剤師は現場だけやってればいい」「薬剤師はくいっぱぐれはない業種」
そんな時代は終わりました。
転職にも、独立にも、経営にも、数字の理解は必須。
そして、その第一歩が簿記です。
迷ったら、まず日商簿記3級を取ってみてください。
世界が、少し違って見えるようになります。
コメント